挑戦の記録 -定期刊行物「感色」制作現場から #1
金よりも“金”らしく、の追求
2025年8月25日
数々の制作経験を、“挑戦の記録” としてお届け
創業150年の京都の印刷会社である当社。これまで「どうすれば、モノの質感や魅力をもっと伝える印刷表現ができるか?」という問いに向き合い続けてきました。
その取り組みの一つとして、2012年に定期刊行物『感色(かんしょく)』を発刊。毎号異なるテーマにピッタリな印刷手法を追求しています。表現の幅を広げる挑戦を重ねることで、技術を磨き、お客様のブランド価値向上に貢献できると考えています。
金インキなのに、“金”らしくない?
金色=高級感、というイメージはあなたにもあるでしょうか?
イベントの招待状やDMなど、いつもと違う特別感を出したいとき、金色という選択肢が頭に浮かんでくるかもしれません。
でもご存知でしたか? 金色の印刷が、一筋縄ではいかないこと。
実際に印刷してみると「なんだか浮いて見える」「のっぺりしてる」と感じることも。
なぜなら、本物の金属とインキでは、光の反射の仕方がどうしても違うから。
本物の金属は光を複雑に反射して、独特の深みや輝きを生んでいます。一方、多くの金インキは真鍮粉(銅と亜鉛の合金)や、時にはアルミニウムと透明な黄インキで再現。実物と比べて光の反射が単調になりがちです。
結果として、「のっぺりした」「浮いて見える」仕上がりになることがあります。
「感色Vol.13 金色の夢」の制作チームも、これに頭を悩ませていました。
この号のテーマは「金色」。アラビアンナイトを思わせる画像や文章で構成されています。


こちらは最終ページに出てくる、廊下の写真。豪華絢爛な建築装飾を表現するために、全面を金インキで印刷してみたところ…

お分かりでしょうか? 確かに金色ではあるものの、奥行きのない、まさにのっぺりとした仕上がりになっています。
前後に広がった廊下の、全面に装飾が施された荘厳さがあまり伝わってきません。
印刷チームは見た瞬間に「これではダメだ」と気づきました。
金インキを使わずに、“金”をつくる
どうすればのっぺりさせずにリアルな金色を表現できるのか?
ここで印刷チームがとった手法は「下地として銀インキを印刷する」というもの。
そうすることで、金の持つ光や反射を印刷でも自然に表現することができます。

別でマスク処理した地面と柱、ドーム以外にまず銀インキを印刷します。その銀インキも、どの程度の濃淡で入れるのか、微妙なバランスを探ります。
例えば、上部のドーム屋根部分。ここは光が差し込んでおり、銀を入れると実物より暗くなってしまうので、わざとグラデーション状で取り除きます。
その上からCMYKを印刷するという一手間が加わりました。
そうすることで、先ほどの金インキのベタ塗りでは出せない、深みや自然な反射が表現できるようになりました。
金を表現するなら金インキ、という固定観念を捨てて、銀インキという異なる手段を選んだことで、むしろリアルな金の質感に近づくことができました。
「どうすれば印刷で被写体をよりリアルに再現できるか?」「どうすれば見る人の五感に伝わるか?」にこだわる当社は、さまざまな技法を駆使しながら、お客様の印刷物に向き合います。細かな工夫を積み重ねて、印刷のこだわりを追求しているのです。
よりリアルな色味を追求した「Vol.13 金色の夢」
一手間を加えるアイデアが、印象を大きく変える。今号はそれがよく伝わってくる一冊になりました。先ほどの廊下以外にも、宮殿やランプ、布地などそれぞれの質感を持つ「金色」を、最適な手法は何なのか追求し、できあがっています。
写真では伝わりきれないその魅力は、ぜひ手に取ってご覧ください。
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